「杉原千畝物語 オペラ『人道の桜』」を鑑賞しました(こども学科 大多和ゼミ)
2023-07-25
カテゴリ:活動の紹介-こども学科

こども学科 大多和ゼミでは「こどもと教育」をテーマとしています。
こども学科 大多和ゼミでは「こどもと教育」をテーマとしています。こどもや学校教育に関連する文献を読むことや保育者に関連する新聞記事を検討することを主な活動としていますが、映画や音楽など文化的な側面からもアプローチしています。
2年生のゼミでは、これまで夜間中学校を題材としたドキュメンター映画「こんばんは2」(森康行監督 2018年)、さらに、第二次世界大戦中に外交官としてリトアニアのカウナス領事館でユダヤ人へ日本を通過するビザを発給し、大勢の命を救ったことで高名な杉原千畝さんの生涯を描いた「杉原千畝物語 オペラ『人道の桜』」を鑑賞しました。2022年11月3日に杉原千畝さんの母校でもある早稲田大学(於:早稲田大学大隈記念講堂)での公演を収めたDVDを用いました。

今回は、そのオペラ「人道の桜」についての紹介です。舞台は2部構成となっています。
第1幕では、千畝の妻・幸子が日本の歌「さくらさくら」とともに、リトアニアに咲く250本の満開の桜の下、千畝と過ごした日々を思い出す場面からはじまります。千畝の早稲田大学時代から外務省への入省、外交官として満州、リトアニアへの赴任、妻との出会いと結婚、そしてビザを発給するまでを描きます。
第2幕では、日本を訪れたユダヤ人たちを迎える敦賀の人々との交流、千畝を待ち受けていた日本政府に反したことでの辛い処遇、さらに後に日本人としてはじめてイスラエル政府から贈られたヤド・バシエム賞を授けられた場面でクライマックスを迎えます。外交官としての杉原千畝の生涯がこの作品には凝縮して描かれているといえます。
作品を鑑賞後の学生の感想
・福井の敦賀の浜の人たちが、ユダヤ人を温かく迎えていたシーンが印象的で、自分もほっこり温かい気持ちになりました。
・杉原千畝さんが日本政府の方針に反してビザを発給していたということははじめて知りました。そうであっても、大勢のユダヤ人にビザを発給し命を救うという「正しい」ことをしたのに、日本に帰国してから不遇な境遇に陥ったことを知り、憤りを覚えました。
・杉原千畝さんのお名前や題材にした本があることは知っていましたが、実際どのような人物かは知らなかったので、今回ゼミで取り上げてもらって勉強になりました。日本政府に反してビザを発給するという行為は、とても勇気がいることですし、葛藤もあったものと思います。杉原さんの英断を支えた奥様の存在も大きかったのだと思いました。
・出演者のみなさんの歌声が圧巻でした。1限から素敵な歌声を聴いて心が癒されました。
大多和講師のコメント

ニシュリ役を演じる声楽家・オペラ歌手の磯谷大樹さん
杉原千畝さんは、小学校、中学校の道徳の時間の教材としてその偉業が取り上げられることもある人物であり、道徳の時間に関連する書籍等を読んだことがある、という学生もいると思います。これから保育者や教師となる学生には、ぜひ触れておいてもらいたい人物のひとりです。そのような杉原千畝さんの生涯を描いたオペラを鑑賞してからは学生にも紹介できればと考えておりました。2022年度の後期には早稲田大学で非常勤講師として教育学部の授業を担当しており、この公演を実際に鑑賞していたこともあり、わたしにとって思い出のひとつでもあります。
ゼミのなかで、杉原千畝さんという人物を知っているか聞いたところ、その人物像をよく知らないというので、「それではこれを観てみましょう」と「人道の桜」の鑑賞を学生に提案しました。この作品はこれまでも東京都内をはじめ、千葉県、岐阜県、福島県、埼玉県、福井県、神奈川県、愛知県など全国各地で公演されています。今後も全国各地で公演されるかと思いますので、ぜひ、学生のみなさんには、実際に鑑賞していただきたいです。
さいごに、豪華な出演者のなかでも重要な人物のひとりであるユダヤ人・ニシュリ役を演じる声楽家・オペラ歌手の磯谷大樹さん(バスバリトン)に注目しています。ニシュリが28年という長い歳月をかけて杉原さんを探し続けてやっと出会えるシーンは感動的です。何より、磯谷大樹さんの低音で深みのある、柔らかさのなかにも凛とした歌声にすっかり魅了され、6月2日には磯谷大樹さんが伯爵役で出演したオペラ「フィガロの結婚」(於:内幸町ホール)も鑑賞しました。これからも声楽家・オペラ歌手としてのご活躍を楽しみにしています。